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囲炉裏


2021.11.04

令和3年11月号 

囲炉裏

 稲津に住み続ける友がいる。定年になって帰郷してきた友がいる。機会があれば帰ってくる友がいる。月に1度友の自宅で8人ほどが手作りの囲炉裏を囲む。
 たわいもない話に花を咲かせ、笑いあい、冗談を言う至福の時間が過ぎていく。決して己の自慢話はしない。小学校・中学校時代の思い出を、同じ話を初めて話すかのようにしゃべる。それを初めて聞いたかのように相槌を打つ。「痴呆」と思われるがそうではない。酒の力と囲炉裏の炎で顔を赤く染め、囲炉裏で焼かれた酒の肴を頬張りながら昔を語り合う。炭をおこす友、酒の肴を焼く友など誰に言われることもなく淡々と役割を果たしている。
 昔から「親友」という言葉を耳にするがここに集まる友は誰もその言葉の定義など持ち合わせていない。メールひとつでフラーっと集まり、奥さんが迎えにくれば千鳥足で楽しそうに「また来るね」と帰っていく。
 幸いにも誰も欠けることなく続いている。やがて訪れる永遠の別れが訪れるまで囲炉裏を囲んで笑いあいたい。
 新型コロナウイルスの収束とともに再び囲炉裏を囲む日が来ることを願う。
 (M)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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